イヴァン・レコ新体制でアントワープはどう変わるのか?三好康児の起用法は?
先月の20日に、退任したルーマニア人のラースロー・ベレニ氏に代わり、イヴァン・レコ新監督の就任を発表したアントワープ。2017-2018シーズンを圧倒的な攻撃力でクルブの優勝を導いたクロアチア人監督の就任によって、アントワープはどう変わるのか、考察してみる。
馬力を前面に出したベレニ体制
システムは4-2-3-1。フィジカルが強い選手が多く、オランダ代表経験があるウェズレイ・フート、元トルコ代表GKシナン・ボラトらの強靭な守備を軸としながら、両ウイングのカメルーン代表FWディディエ・ランケル・ゼ、ポルトガル人FWイヴォ・ロドリゲスの突破力を活かした鋭いカウンターが特徴的だった。
細かくパスをつなぐようなタイプではなく、ロングボールが多くアップダウンが激しく、フィジカルや運動量を前面に出し、最後は決定力の高いムボカニとラファエロフのコンビによる得点力を軸に、リーグ3位の49得点、リーグ4位タイの32失点を記録した。
しかし、タフさを前面に出すサッカーのため、ピッチに立つ選手はフィジカル面で充実した選手が好まれたため、怪我で苦しんだ元ベルギー代表FWケヴィン・ミララス、MFスティーヴン・デフール、日本代表MF三好康児はチャンスに恵まれていなかった。
また、試合内容も得点力はムボカニとラファエロフの個人技に依存するため、アントワープに対して守備的に振る舞う相手には、苦戦が強いられることが多かった。試合のテンポを変えるにしても、テクニシャンのラファエロフの技術と創造性任せになる傾向が強かった。「激しくファイトできるが試合は単調」なチームである。
リーグ優勝も期待できる戦力は揃っており、今季のクルブに唯一の黒星をつけながらも、リーグ優勝したクルブと大きな差をつけられたのは、戦術面での柔軟さの欠如が大きかったと言えるだろう。
攻撃力を前面に出すレコのクルブ
アントワープの新監督に就任するイヴァン・レコ監督が、クルブ・ブルッヘを率いている2018-2019シーズンのフォーメーションがこちら。
格上との対戦になるチャンピオンズリーグでは、4-4-2をメインで戦っていたが、国内リーグでは3-1-4-2がメイン。両ウイングバックに本職をFWの選手を起用した、極めて攻撃的なチームだ。このシステムは、2019年夏からクルブを率いることになったフィリップ・クレマン監督も採用しており、今やクルブの代名詞になりつつある。
攻撃の組み立ては、豊富な運動量とパスでチームを動かすキャプテンのルート・フォルメルと、195cmでロングボールのターゲットにもなりつつも、左右前へ決定的なパスを出していく「万能型トップ下」のハンス・ファナーケンが鍵となる。その背後には「元トップ下」のマッツ・リッツがバランスを取る。
長身のウェズレイ(現アストン・ヴィラ)と、その周囲を動き回るFWシーベ・スフライフェルスが得点源になるが、サイドからセネガル代表FWクレパン・ディアッタ、ナイジェリア代表FWエマニュエル・デニスらが縦への突破やカットインからゴールを狙った。守備的な相手に対しては、6トップのような形になり、3バックのDFステファン・デンスヴィル(現ボローニャ)、DFブランドン・メヘルらがパスの供給源となった。
優勝した2017-2018シーズンは85得点45失点、2位で終わった2018-2019シーズンは83得点43失点と、2シーズンともリーグ最多ゴールを記録している。守備的な選手を削ってまで、前線の選手をたくさん起用する成果が出ていたと言えるだろう。
クルブ時代を踏襲するのか?
2シーズンで爆発的な攻撃力をクルブで披露してきたイヴァン・レコは、来シーズンからアントワープを率いることになった。
選手の特徴やスタイルから考察すると、クルブ時代のサッカーを踏襲することになるなら、昨シーズンのアントワープのスタイルを大きく変えることになるだろう。
現在のメンバーで適当に並べるとこういう感じになる。
リーグトップレベルの右SBの呼び声も高いアウレリオ・ブタは引き抜かれる可能性が高いと見られているが、現状では中国のクラブが興味を持っていると言われるムボカニ、リーグアン復帰の可能性があるFWランケル・ゼなど、現状のメンバーも先行きが不明だが、現在のメンバーで照らし合わせるとこういった感じになるだろう。
三好にとってはチャンス?
日本人視点にやっぱり三好康児についてだろう。
昨シーズンは、ベルギーリーグデビュー戦となったアンデルレヒト戦で鮮烈な決勝ゴールを決めた三好だったが、その後は怪我もありリーグ戦14試合1得点、カップ戦は1試合2得点で本領発揮とは行かなかった。
チームの最大のライバルであるイスラエル代表MFリオル・ラファエロフからポジションを奪うことができず、サイドは突破力に優れるアタッカーを重宝されていたために、ベンチが定位置だった。Jリーグでも得点力が課題だと言われていた三好にとっては、ラファエロフに対しては得点力で明確な差をつけられており、スタメンで出場するにも、長年の激闘により足首や膝に負傷を抱えるラファエロフのコンディション次第だった。ベレニ監督に併用策は持ち合わせていたと言えないのも不運だったのかもしれない。
次のシーズンは、攻撃の選手を多く起用するイヴァン・レコ監督が就任することによって、ポジションを争うラファエロフとの併用策も十分に考えられるだろう。
レコ監督のクルブ時代にトップ下で起用されたベルギー代表MFハンス・ファナーケンは、ロングボールのターゲットマンとなり、得点力でも屈指の実力を誇っただけに、得点力に課題を抱える三好によっては、ファナーケンと同じように…とはなかなかか行かないだろう。昨シーズンでも試合に出場すれば、決定的なチャンスを演出する場面もあり、アントワープでも重要な戦力となっているが、ポジションを掴むためには、やはり得点力の改善は必須になるだろう。
イヴァン・レコ監督は、クルブを率いる以前のシント・トロイデンでも攻撃的な選手を多く起用したサッカーを展開していたことを考慮すると、フィジカル一辺倒ともいえるサッカーだった昨シーズンのアントワープから、来シーズンは大きく変化する可能性があるだろう。三好康児にとってはキャリアを左右する大きな節目になると予想されるが、成功を祈りたい。
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