ベルギーリーグについてブロガー歴10年の自分が思うこと Vol.1
ここ数年の久保裕也と森岡亮太の活躍に、今シーズンの日本人選手のベルギー参戦と、注目度が上がってきているベルギーリーグ。欧州でメジャーな5大リーグに比べ、あまり知られていないリーグだけに、何点かお応えしようと思います。
ベルギーのカントリーランクが上がっている理由
まずこれから。10年前程は、UEFAのリーグランキングで14位前後を彷徨っていたベルギーリーグが、いつの間にか、隣国のオランダ・エールディビジや、トルコのシュペル・リギなどを抜いて、現在は9位に浮上しました。
チャンピオンズリーグに出場するクラブの多くは、グループリーグを突破できず、現行のレギュレーションになった1992年以降は、グループリーグを突破して、決勝トーナメントに進出したのが、2015-2016シーズンのゲントのみで、後はグループリーグで破れています。
CLで結果を残せないベルギー勢が、なぜポイントを稼いでいるのか?
それは、UEFAヨーロッパリーグで、ベルギー勢が健闘しており、ベルギー上位の4チームがポイントを稼いでいるからです。ここ5年間の実績を示した、現在のUEFAポイントを元に、ベルギー勢の現在の順位はこちらです。
33位 アンデルレヒト 48000
49位 クルブ・ブルッヘ 29500
55位 ゲント 27000
ゲンク 27000
110位 スタンダール・リエージュ 12500
118位 ズルテ・ワレヘム 11000
CLに出場すれば、結果を出せないアンデルレヒトも、ここ5年ではベスト16、ベスト8が1回ずつ。クルブはベスト8が1回。ゲントはCLベスト16、ELベスト16が1度ずつ。ゲンクも2016-2017シーズンのベスト8で大きく稼いでいます。
逆にオランダ勢は、近年はELの予備予選で敗退するクラブが多く、31位のアヤックス、40位のPSVアイントホーフェン以外が、なかなか実績を挙げられず、順位も大きく落としていると言えます。
毎年安定してグループリーグを通過してくれるクラブがあれば、CLで実績を挙げなくても、UEFAカントリーランキングも伸びてくるものです。
ベルギーリーグは5大リーグの1.5部くらい
ベルギーリーグのレベルについては、普段からもよく聞かれますが、ベルギー勢のヨーロッパでの実績や、所属選手の動向、各クラブの資金力を考慮すると、上位5ヶ国のリーグの1部と2部の間くらい・・・と考えられるかと思います。
チャンピオンズリーグに出場すると、スペイン2強、イングランド勢、バイエルン、PSGなど優勝争いするようなクラブ相手になると、0-3以上の大差で負けることも珍しくありません。
ただ、その下にいるクラスに対しては、互角の戦いを演じています。その代表格が、ベルギー勢唯一のCLベスト16の実績があるゲントですが、近年では、以下の成績を残しています。
2015-2016シーズン UEFAチャンピオンズリーグ
vsリヨン(フランス) 1勝1分
vsバレンシア(スペイン) 1勝1敗
vsゼニト(ロシア) 1勝1敗2016-2017シーズン UEFAヨーロッパリーグ
vsシャフタール・ドネツク(ウクライナ) 2敗
vsブラガ(ポルトガル) 2分
vsコンヤスポル(トルコ) 2勝
vsトットナム 1勝1分
世間一般的にアンデルレヒトやクルブに比べて、どうしても過小評価されやすいゲントですが、欧州の上位5ヶ国のリーグで、3位~6位に入るような常連クラブ相手には、互角の戦績を収めていることがわかると思います。相手クラブの調子が悪い時期に、ちょうどゲントの対戦カードがあった幸運もあったのは否定もできませんが、5大リーグで残留争いをするクラブに、これらの相手に対して、安定して勝利を奪えることは、なかなか難しいのではないでしょうか?
逆にベルギー勢が調子の悪い時期に欧州戦を戦うと、オーストリアやベラルーシのクラブに負けてしまうことも、たまにあります。マイナーなクラブでも、欧州に出てくるには、リーグ戦かカップ戦で結果を残したクラブのみが出場するだけに、どこも油断ができないものです。
ベルギーリーグには、CLで上位へ進出するようなメガクラブは存在しませんが、5大リーグでトップ10入りするようなクラブとは、互角以上の戦績を収めてきました。あまり大きく取り上げられることはないですが、この結果がないと、今のカントリーランキングはありえません。
2シーズン前のELで、スパーズがゲントに破れたことで、Twitterなどで「ゲントなんかに負けて」「スパーズやらかした」・・・など言われましたが、おそらく多くの方々がゲントが前年度のCLベスト16であることを、頭に入いていなかったのだろうなあ・・・とは思ったものです。CLグループリーグ敗退したチームが、前年度で勝ち抜いたチームに負けるのは、何もおかしいことないのに。どれだけ舐めてるのやら。
ベルギーリーグとは、5大リーグにビッグクラブを差し引いて、2部のクラブを加えたようなリーグ・・・がちょうど合っていると思います。
ベルギーリーグに欠かせないフランス人
ベルギーリーグにやってくる選手について。外国人だけでスタメンを組んでしまうことも可能なリーグですが、どういう選手が来るのか?
まず、一番欠かすことができないのが、外国籍の選手で多くを占めるフランス系。事実上のモナコのセカンドチームで、フランス国籍だけで12人在籍しているセルクル・ブルッヘが代表的ですが、フランス語圏のスタンダール・リエージュ、シャルルロワはもちろん、オランダ語圏のクラブにも、フランス人、フランスの育成組織上がりのアフリカ人など、多数在籍しています。
今のアフリカの代表チームを支えているのも、フランスと言ってもいいほど、今日ではフランスは世界最高の育成を誇りますが、トップを争う名門クラブのトップチームに昇格できなかった選手や、資金力に恵まれないフランス2部から引き抜いた選手、降格組の主力選手など、毎年多数の選手がフランスから流れてきます。
リーグアンで活躍できない無名フランス人には、後にイタリアで二桁得点を記録したFWシリル・テレオ(現フィオレンティーナ)、かつてビジャレアルで活躍したFWジェレミー・ペルベ(現シャルルロワ)など、掘り出し物が多く、資金力に限りがある中堅クラブにとっては狙い所です。
最近では、フランス2部のブール・ベロナから獲得し、ゲントの守備の中心に定着した後、チュニジア代表としてW杯に出場して、ベルギー戦でゴールまで決めてしまった、DFディラン・ブロンが当てはまるでしょう。
フランス2部は一見大したことなさそうに見えるかもしれませんが、今のリーグドゥには、オセール、ランス、メス、ル・アーブル、ソショーなど、今も各年代別代表に選手を送り込む育成の名門からも、ベルギーにたくさんの選手が流れています。日本におけるブラジル人の役割を、ベルギーではフランス人が担っている・・・とも言えるでしょう。
かつてはベルギーリーグから多数引き抜いたオセールが、逆にベルギーのクラブから引き抜かれる立場になるのは、長年のファンとしては、かなりキツいのですが…。
身体能力に優れたアフリカ系を始めに、多種多様の無名ながら実力のあるフランス人は、ベルギーのクラブにとっては、コストパフォーマンスが抜群の人材です。ベルギー人がもともと大柄な体格であるのも大きいですが、フィジカル的にタフな特徴をつけているのは、流れてくる選手の特徴が大きく影響している面も否定はできないでしょう。
隣国オランダとの比較をよく耳にしますが、選手の動向をチェックしている身としては、あまりピンと来ないのが正直なところです。逆にフランスとの関わりを触れずに、ベルギーリーグを語っちゃうのは、個人的にツボを押さえていない印象は拭えないものです。
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