三笘薫の加入が噂されるユニオン・サン・ジロワーズ(USG)について

U-24の日本代表に選出されている、Jリーグ屈指のウイングのFW三笘薫(川崎フロンターレ)選手が、ブライトンへの移籍が取り沙汰されており、最初の1年間はベルギーのユニオン・サン・ジロワーズ(USG)への期限付き移籍が濃厚と見られています。

三笘薫は日本代表歴がなく、イギリスの労働許可が降りないため、1年間はブライトンと同じトム・ブルーム氏がオーナーを務めるUSGでプレーすることになると見られています。

日本ではほとんど馴染みがないUSG。「48年ぶりの1部昇格」「ブライトンと同じオーナーが務めるクラブ」など、限られた情報のみしかニュースサイトで発信されていませんが、このブログではUSGについてもう少し踏み込んでみようと思います。

ブリュッセル第2のクラブ

USGはブリュッセルの中央にあるサン・ジルをホームとするクラブです。

創立は1897年と古く、ベルギーサッカー協会の登録番号は10で登録されています(ちなみに1はベルギー最古のクラブ、ロイヤル・アントワープ)。ブリュッセルの中では、アンデルレヒトよりも古い歴史を持ったクラブの1つで、第二次大戦前は11回の優勝を誇る「古豪」として知られています。

1972年に2部降格を最後に長年1部から遠ざかり、近年でも2008年から2015年まで3部に在籍するなど、近年まで低迷していました。2018年にイングランドのプロポーカープレーヤーである、トム・ブルーム氏が買収してからは、着実に力をつけ、上位争いの常連になりました。

https://twitter.com/shevkengo/status/1413342803204083714?s=20

ホームスタジアムは「スタッド・ジョセフ・マリン」。ブリュッセルのフォレ地区にあり、山林に囲まれたスタジアムが特徴的です。こじんまりとした小規模のスタジアムということもあり、スタジアムのライセンスに抵触するのではないかと言われてきましたが、今シーズンはこのスタジアムで戦うことになっています。オーナーのトム・ブルーム氏は改修も検討していると報道には上がっていました。

圧倒的な成績で2部優勝

2020-2021シーズンのUSGは、シャルルロワ、ヘンクを率いたフェリーチェ・マッズ監督が就任しました。過去にベルギーリーグで最優秀監督賞も受賞した経歴がある名将が就任し、着実な戦力補強も実ったこともあり、昨シーズンは「昇格大本命」とされていました。

序盤戦は2勝2分1敗でややスタートダッシュに失敗したものの、第6節目から6連勝で早くも独走体制を築き上げます。第12節にスランに破れたものの、第13節目からはリーグ戦12連勝を記録。3月13日のRWDM戦で5試合を残し、リーグ優勝を決め、48年ぶりの1部昇格を果たしました。全28試合で22勝4分2敗69得点24失点と、2位のスランに勝ち点18点差をつけ、圧倒的な力を見せつけ優勝を果たしました。

2部では安定して上位争いをし、毎年のように昇格候補の一角として注目されていたが、ようやく悲願の昇格を果たすことができました。

屈指の戦術家、フェリーチェ・マッズ

USGの監督を務めるのは、55歳のフェリーチェ・マッズ氏。プロ選手としてのキャリアはなく、体育教師を務めながら指導者の道に進み、長年アマチュアクラブの指導者を務めてきましたが、2010年代に入り、3部のロイヤル・ホワイトスター・ウォルウェを2部に昇格させてから、2013年に地元のシャルルロワの監督に就任。2017年にはベルギーリーグの最優秀監督賞に値する「レイモン・ゲタルス・アワーズ」を受賞しました。

https://twitter.com/shevkengo/status/1413348610306019334?s=20

近年では、2019年にヘンクの監督に就任したものの、成績低迷により解任。ヘンクでは失敗を喫したものの、2020年に就任したUSGでは圧倒的な成績を収めました。

シャルルロワ時代には森岡亮太、ヘンク時代には伊東純也を指導しており、森岡や伊東を追ってきた人にとっては馴染みのある監督かと思われます。

ベルギーリーグでも屈指の戦術家として知られ、システムは[4-3-3][3-4-3][3-3-3-1]など様々なシステムを柔軟に使いこなしています。シャルルロワ時代では固い守備からの鋭いカウンターを武器にするチームを作り上げ、ベルギー下位の常連だったシャルルロワを上位争いを演じるクラブに化けさせることができました。

そして、選手交代での流れを変えることが得意とするため、マッズの率いるチームは終盤でのゴールも得意する傾向があり、最終盤はベルギーでは「マッズ・タイム」と呼ばれています。かつてはベルギー代表監督に推す声があったほどの実力派の指導者です。

近年のベルギーリーグの昇格組は、昇格の勢いに乗るチームが多く、多くが中位に進出しているだけに、圧倒的な成績で昇格したUSGもまた、猛威を振るう可能性を秘めています。

強力2トップが最大の武器

圧倒的な力を見せつけて2部優勝をかっさらったUSG。その原動力となったのが、元U-21代表FWダンテ・ファンゼールと、ドイツ人FWデニズ・ウンダヴのコンビです。

ファンゼールは、ヘンクのユース出身で若手時代から将来を嘱望されていたものの、ヘンクではなかなか結果を出すことができず、毎年のように期限付き移籍を繰り返してきました。2020年夏になりUSGへ完全移籍すると得点力が一気に開花。スピードを生かした鋭い裏抜けを武器に得点力を発揮し、昨シーズンは19得点8アシストで、2020-2021シーズンの2部のMVPに選出されました。

もうひとりのアタッカーが、ドイツ出身のFWデニズ・ウンダヴ。ドイツの下部カテゴリーを経て、2020年にUSGへ移籍すると、ファンゼールとのコンビでゴールを量産。セカンドトップ、センターフォワードをこなし、鋭いパスからアシストも量産しました。

ダンテ・ファンゼールとデニズ・ウンダヴのコンビで、36得点13アシストを記録し、圧倒的な攻撃力でチームを牽引してきました。

マルタ、ルクセンブルクなどの代表選手も在籍

USGは国際色が豊かなチームで、自国ベルギーの他、フランス、デンマーク、イングランド、モロッコ、イタリア、マダガスカルと多数の国籍の選手がおり、今シーズンからはコートジボワールの年代別代表経験があるMFティエリー・ラザレ、元ウルグアイU-21代表FWフェリペ・アベナッティなどの即戦力も獲得しています。

中でも珍しいのは、マルタ代表MFテディ・テウマ、ルクセンブルク代表GKアントニー・モリスの存在でしょう。

https://twitter.com/alfklly/status/1414230902520045568?s=20

フランス出身でマルタにルーツがあるテウマは、USGではチームキャプテンを務めています。主にセントラルハーフでプレーをし、正確な左足から数多くのチャンスを演出しています。代表は2020年からマルタでプレーしており、数少ない国外組の一人として奮闘しています。

そして、USGの守護神は、ルクセンブルク代表GKアントニー・モリスが守ります。ベルギー南部のアルロン出身でルクセンブルクにルーツがあるモリスは、年代別代表ではベルギーでプレーし、かつてはスタンダール・リエージュのセカンドGKを務めていました(当時は川島永嗣が正GK)。2014年からルクセンブルク代表でプレーし、現在は正GKとして活躍しています。

三笘薫の起用ポジションは?

優勝した昨シーズンは3-4-1-2を採用。テウマやニールセンの組み立てから、ファンゼールとウンダヴの強力2トップがゴールを量産する形を形成していました。

ニールセンはもともとディフェンシブハーフが本職だけに、三笘薫が加わることになれば、トップ下での起用が十分に考えられるでしょう。2部で猛威を奮ったファンゼール&ウンダヴのコンビに三笘が加われば、更に攻撃力が増すことも考えられます。

Jリーグでプレーしていた日本人選手が、ベルギーでは違うポジションでプレーすることは珍しいことではないので、三笘薫が川崎と同じようにウイングでプレーするといった起用法にならないのは十分に考えられるでしょう。

直近では4-3-3をテスト

昨シーズンは[3-4-1-2]をベースとしていたフェリーチェ・マッズ監督だが、シャルルロワ時代には多数のシステムを採用していたことから、別のシステムを採用することも考えられます。

直近で行われたフランスの名門、RCランスとのトレーニングマッチでは、4-3-3をテスト。エースのファンゼールを右WG、ウンダヴをCFに起用するシステムを採用していました。結果はテウマのゴールで1-0で勝利。トレーニングマッチではありますが、現在は充実したキャンプを送っているようです。

この試合で左WGで起用されたラプサンは、昨シーズンはあまり出場機会が得られなかっただけに、このポジションに三笘薫が起用される可能性は十分に考えられます。RCランスとの練習試合ではファンゼールとテウマがいる右サイドに偏っており、左サイドからの攻撃には課題を残しているように見られるだけに、三笘薫が加入することになれば、重責を担うことになるでしょう。

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