久保裕也のニュルンベルク移籍後半年を経て

2019-02-06

ツイッターで少しお騒がせしたので、少し書いておきたいと思います。


ゲントのサポーターとして、約1年半、久保裕也のことを自分が応援するチームの一員として応援していました。もちろん今もニュルンベルクで成功を収めて思っています。

ただ、彼が今ドイツで上手くいかないのを「過大評価」など言われたり、ベルギーリーグを「無双」したなど言われるのは、ちょっとどうかと思っています。自分の応援しているチームに関わることで、毎週にチェックしているわけでもない人の意見が風潮となるのは、誰のためにもならないと感じます。

3点だけ書いておきます。

開幕2試合のみで出場機会を失っていた

開幕当時はエースストライカーとして期待され、年齢的にもラストシーズンとして見られていました。(本当はW杯で活躍して次のクラブへ高く買ってもらいたかった)

しかし、開幕戦のスタンダール・リエージュ戦での決定機でのミス、第2節のズルテ・ワレヘム戦でのPK失敗が響き、途中交代の憂き目にあってしまいます。

更にタイミングが悪いことに、実質上のルーキーシーズンとなる、ユースから昇格してきたカナダ人FWジョナサン・デイヴィッドが久保と代わるように活躍してしまい、チーム内でのアタッカーの序列が変わってしまいました。ヨーロッパリーグの2試合を含めた3試合では、出場機会がありませんでした。

2年連続でチーム得点王で、チームではエース格には違いありませんが、ベルギーでは3位の資金力があるゲントだけに、久保以外にもアタッカーは取り揃えています。ウクライナ代表FWロマン・ヤレムチュク、カナダ代表FWジョナサン・デイヴィッド、ジョージア代表FWギオルギ・クヴィリタイアなど、チーム内で各国の代表選手がしのぎを削っており、実績がある久保でも決してポジションを守ることは簡単ではありません。

ただ、久保自身がゴールを決められなかった中で、他の選手が決めてしまっただけに、シーズン前は予期せぬ移籍に発展してしまったかと私は感じています。

ニュルンベルクへの移籍はステップアップではない

8月下旬にニュルンベルクへの期限付き移籍が決定しましたが、これを「ステップアップ」と捉える人が多いように思えます。

ゲントを応援している立場からすると、それは違うでしょう。

昨年の夏の移籍マーケットでは、ゲントからは常にレギュラーを張る主力選手が久保選手を含めて6人放出しています。Transfermarktでの記録ですが、昨年夏にゲントを巣立っていった主な選手と、推定移籍金を記しておきます。

FW モーゼズ・サイモン(レバンテ) 450万ユーロ
FW サミュエル・カル(ボルドー) 765万ユーロ
FW ピーター・オラインカ(スラヴィア・プラハ) 288万ユーロ
DF ステファン・ミトロヴィッチ(ストラスブール) 270万ユーロ
DF トーマス・フォケ(スタッド・ランス) 315万ユーロ
DF サミュエル・ジゴ(スパルタク・モスクワ) 720万ユーロ

参考
https://www.transfermarkt.co.uk/kaa-gent/transfers/verein/157

オラインカとミトロヴィッチは主力ではないため、多少安めの移籍金になっていますが、ナイジェリア代表でもプレーする両翼のサイドアタッカーのサイモンとカルはそれなりの金額で取引されています。4大リーグに限らず、毎年主力選手を放出しているゲントですが、どこのクラブもそれなりの金額で買い取ってくれているのが分かると思います。

これを見てしまうと、ローン移籍である久保は移籍先がブンデスリーガであっても、とてもステップアップとは言えないのが正直なところです。言い方が悪いですが、期限付き移籍での放出では、ゲントが久保を構想外にしてしまったようにも見えるかもしれません。

ゲントでは難しい状況に陥ってしまった久保自身の「環境を変えるため」の移籍…と言えるのではないでしょうか?

ただ、10月上旬に監督が交代したので、本当は移籍しない方が良かったのでは・・・とは思っていたりもします。

結果が出ないのは彼だけの問題?

久保裕也がゲントに来た当時を思い出すと、彼は移籍した理由に「すごいボールポゼッションをするチームで、僕的には魅力的」と言っていました。

超モダンなサッカー 久保裕也が選んだヘント
https://www.sponichi.co.jp/soccer/yomimono/column/kaigai/kiji/20170223s00002372240000c.html

獲得した当時、ゲントはリーグ戦での成績が振るわず、攻撃陣ではポルトへ放出したローラン・ドゥポワトル(現ハダースフィールド・タウン)に代わる得点源がなかなか見いだせない時期でした。その時に数多くの選択肢の中から、ゲントは久保裕也を選び、クラブとしては決して安くない350万ユーロの移籍金をヤングボーイズに払いました。

その後の活躍は多くが存じている通りですが、当時の過剰に久保を持ち上げて、チーム自体を軽く見る報道に影響されたのか、多くが久保が独力で切り開いたように見えたのかもしれません。

しかし、このチームを追い続けている自分にとっては、どうしても足りなかった「フィニッシャー」を久保が埋めてくれたと感じています。サイドアタックは快速ウイングのサイモン(現レバンテ)、クロッサーのフォケ(現スタッド・ランス)、ポストプレーヤーのクリバリー(現ナント)など、それぞれの役割はしっかり構築できても、点をとってくれる選手がなかなかいなかっただけに、久保は全てを仕上げてくれる存在でした。

当時の監督であるヴァンハーゼブルックを筆頭に、他のチームメートの存在も、久保の活躍を支えていたことを忘れてほしくないと思っています。

ただ、そのように考えると、久保が移籍したニュルンベルクは、どこまで彼が活躍するように考えていたのか?もしくは彼が活躍するためのプランや戦術が確立されているのか?そもそも本当に必要なのか?…と感じてしまうのが正直なところです。

ニュルンベルクでのプレーを何試合も見て判断するべきことも多いと思うが、ゲントより久保を上手く使えなかったら、ブンデスリーガであろうと、ベルギーであろうと、結果が出ないものだと私は感じます。久保1人が移籍したのであって、ゲントがそのままブンデスリーガに参戦しているわけではないので。

ゲントのエースとして戦っていた久保裕也と、ニュルンベルクでプレーしている久保裕也は別物として考慮入れる必要はあるでしょう。

選手個人が合うクラブ

中島翔哉『皆さまにお知らせ』
https://ameblo.jp/shoyanakajima/entry-12436868188.html

最近、カタールのアル・ドゥハイルへ移籍した、中島翔哉選手のブログを読みました。リーグのレベルや知名度ではなく「自分に合うのか」を基準にチームを選んだことをブログに記しています。

これ、久保がゲントを選んでくれたときと、そんなに変わらないかなと感じます。あらゆる理由はあると思いますが、記者会見の第一声で「すごいボールポゼッションするチームで、僕には魅力的」だからを挙げていたので、彼の好みに合ったところだったかな…とポジティブには捉えています。

イングランド、スペイン、イタリア、ドイツといわゆる「4大リーグ」と呼ばれるリーグへの移籍を願う人は多いですが、実際にプレーして活躍しないと意味が無いので、プレーする選手達にとって、どれが満足できて、どれが合うのかを基準に考えていていいのではないかと感じます。

個人的には、今も彼にとって魅力的なクラブだと思ってくれるなら、来シーズン、是非ゲントに戻ってきてほしいなと思っています。

選手だけでなくチームも楽しんでいただけたら…

ベルギーのようなマイナーなリーグになると、どうしても選手が「独力」で切り開いたように魅せたがり、全てを日本人の手柄にしたがるようにも報道やサッカーファンの反応を見ても感じられてしまいますが、チームスポーツとは「チームが個人を助ける」「個人がチームを助ける」の双方が無くてはならないものでしょう。

本当はそういう観点で考えると、日本人目当てでベルギーサッカーを見る方々も、せめて自分たちのチームメートのことを覚えてくれたらな~と思っていたりもします…。

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