森岡亮太がアンデルレヒトとは②

森岡亮太が移籍したアンデルレヒトについて。
後編は今シーズンのチームについてです。

序盤につまづき、レネ・ヴァイラー監督は解任

昨シーズンは3シーズンぶりに優勝を果たしたアンデルレヒト。しかし、昨シーズン終了後に、ベルギー代表MFユーリ・ティーレマンスをモナコへ移籍。ティーレマンスの放出は大きく、昨シーズンの得点王のウカシュ・テオドルチクがスランプに陥ったことにより、チームは低迷。優勝は果たしたが、守備的な試合内容でサポーターからの不満が大きかったこともあり、9月18日にレネ・ヴァイラー監督は解任されました。

解任後は、2000年代にアンデルレヒトのFWとして活躍し、ヘッドコーチを務めていた、アルゼンチン人のニコラス・フルートス氏が暫定的に指揮を執っていたが、10月3日にゲントの監督を退任したばかりの、ハイン・ヴァンハーゼブルック氏が就任しました。

ベルギー国内有数の戦術家、ハイン・ヴァンハーゼブルック

10月にアンデルレヒトの監督に就任した、現在53歳のヴァンハーゼブルック氏。現役時代はセンターバックとして、コルトライク、ハーレルベーケなどでプレーし、2000年に現役引退後は、ロケレンのアシスタントコーチに就任し、指導者の道へ。

2006年に当時2部のコルトライクの監督に就任すると、2007-2008シーズンに2部リーグ優勝を果たし、10年ぶりに1部に復帰させると、2009-2010シーズンにコルトライクを5位に導き、翌シーズンにはゲンクへ移籍します。ゲンクでは成績は振るわず、約半年で解任されるものの、1年でコルトライクへ復帰。当時のリーグ最小規模のチームでありながら、当時のベルギーリーグでは珍しい3-4-3のフォーメーションを駆使して、10位以上の成績を収め、ベルギーカップ決勝と優勝プレーオフに進出した2012年にはベルギー最優秀監督を受賞。2014年からは2年連続二桁順位で苦しんでいたゲントの監督に就任します。

コルトライクで指導したMFスヴェン・クムス、オーステンデで奮闘していたFWローラン・ドゥポワトルを獲得したゲントは、序盤から好調をキープし、シーズン中盤には今の主力となる、ナイジェリア代表FWモーゼズ・サイモンを獲得。レギュラーシーズンを2位で終えると、プレーオフでは首位のクラブ・ブルッヘを追い抜き、ゲントは創設115年で初優勝を達成します。初出場となった2015-2016シーズンのチャンピオンズリーグでは、ゼニト、バレンシア、リヨンと同組になり、下馬評が低かったゲントは草刈り場と予想されたが、勝ち点10を得て、チャンピオンズリーグに改称後、ベルギー勢としては初の決勝トーナメント進出を果たします。ベスト16ではヴォルフスブルクに敗れたが、洗練されたチームは高く評価されました。

翌シーズンのヨーロッパリーグでは、安定した試合でグループリーグを突破し、決勝トーナメントではトットナムを撃破。しかし、年々選手は引き抜かれ、新たに獲得した選手がフィットに苦しみ、徐々にチーム力は低下、今シーズン途中でゲントと双方合意の上で退任となりました。

ゲントの監督退任後、1週間もしないうちにアンデルレヒトの監督に就任。ゲントの新監督に就任したのが、コルトライク時代にヴァンハーゼブルックのアシスタントコーチを務めていた、イヴ・ヴァンデルハーゲが就任するとは面白いものです。

ベルギーでは珍しい3バックを駆使する


ヴァンハーゼブルック監督と言えば、ベルギーでは珍しい3バックの使い手と知られます。守備時は5バックで固いブロックを作り、攻撃時には両ウイングバックが攻め上がり、5トップのような形を作るサッカーをします。ポゼッションを高め、サイドの幅を上手く使いながら崩していくサッカーは、チャンピオンズリーグでも十分通用するものでした。

ゲントにおけるヴァンハーゼブルックのサッカーについては、久保裕也が移籍した去年1月以降に見た人にとっては、あまり良くなかった印象はあるかもしれませんが、ベルギー代表にも選ばれ、現在はハダースフィールド・タウンの主力としても活躍する、1トップのローラン・ドゥポワトルと、2015年のゴールデンシューズ(HLNが選出するベルギーリーグ最優秀選手)にも選ばれた、スヴェン・クムスの存在が大きく、彼等が抜けた後では、チームのやりくりに相当苦労している時期だったのが、個人的な印象です。前者はCLでも十分通用したポストプレーヤーで、後者はベルギーを代表するパサーですが、彼等に代わる選手を、ゲントの強化部が上手く獲得してあげられず、監督は難しい状況に陥ってしまったかと感じました。

分厚い中盤と手薄な前線


現在はアンデルレヒトでも3バックを採用。ゲントと同じく、3-4-2-1を採用。ベルギー代表にも名を連ねる、MFレアンデル・デンドンケル、スヴェン・クムス、U-21代表MFピーテル・ゲルケンス、スタンダール・リエージュでキャプテンを務めた左利きのフランス人MFアドリアン・トレベルなど、中盤の層が厚いチームです。そのため、クラブ史上最高額の970万ユーロで鳴り物入りで獲得したが、アンデルレヒトではフィットせず、余剰戦力と化していた、ルーマニア代表MFニクラエ・スタンチュをスパルタ・プラハへ放出しています。

元々はセンターハーフで起用されていたデンドンケルが、ヴァンハーゼブルック監督の元ではリベロで起用されるようになっています。ベルギー代表でもセンターバックでのプレー経験があり、代表では高齢化が目立つポジションだけに、次世代の守備のリーダーとして期待される声はあるが、彼の持つ能力を考えると、少々もったいない印象も感じます。

ただ、ゲントでも前線やりくりに苦戦したように、アンデルレヒトでも前線に入れる選手は苦心している模様です。昨シーズンの得点王、ポーランド代表FWウカシュ・テオドルチクは、ボックス内での得点力こそは優れるものの、ポストプレーは不得手で、現監督とはあまり相性が良くないと言われています。現在は、メヘレンへレンタル移籍中だった、シルヴェール・ガンヴラを呼び戻し、ユースから昇格したロカンガと併用しています。二人共、身体能力は高いが、まだ若く荒削りな面が目立ちます。

現在のチーム得点王のヘンリー・オニェクルは、去年末に膝を故障し、長期離脱中。チーム得点2位のソフィアン・アンニがスパルタク・モスクワへ移籍したため、アンデルレヒトはアタッカーの層の薄さを懸念されています。移籍期限終了間際に、アンデルレヒトでプレーしていた、セルビア代表FWアレクサンダル・ミトロヴィッチがメディカルチェックも受けて、獲得寸前まで行きましたが、金銭面での折り合いが上手く行かず、破断になりました。リヴァプールから、同じくセルビア代表FWラザル・マルコヴィッチを獲得したが、フィジカル面での課題を指摘されているため、CFでの起用は向かないと見られています。

求められるのは得点力か?

今冬に加入した森岡についてだが、印象としては、スパルタ・プラハへ放出した、ニクラエ・スタンチュの後釜という印象を感じます。セカンドトップとして、フィニッシャーとしての動きが目立ったアンニの後釜として入るには、パサーというよりは、フィニッシャーとしての動きを求められるように思えます。セカンドストライカーとしてプレーしている実績があるラザル・マルコヴィッチが、アンニの後釜と考えられるように思えます。


前所属のワースラント・べヴェレンでは、4-2-3-1のトップ下を務めていた森岡亮太だが、サイドアタッカーのアンポマー、ボリェヴィッチの突破力、クロッサーのデミル、フィジカルが強いセンターハーフのセックとアングバン、そして恵まれた体格を駆使したポストプレーが上手く、現在の得点ランキング1位のテリンと、やや選手層の薄さは気になるものの、攻撃面では充実したメンバーがおり、攻撃戦術が優れたチームでした。昨シーズンも何試合か試合を見ましたが、他のクラブで活躍したアタッカーが在籍する割に、チャンスがなかなか作れず、元々パサーに恵まれないチームだっただけに、森岡がラストピースとしてハマった印象がありました。

攻撃面での整備が進んでいたワースラントは、森岡にとってはかなりプレーしやすいチームだったかと感じます。しかし、次にプレーするアンデルレヒトは、攻撃面はこれから再構築していくため、なかなかリスクが大きな移籍ではないかと思います。後ろにはクムスとトレベルという、リーグでも屈指のプレーメーカーがいるため、ポジションを下げて組み立てに参加する必要は殆どないと思いますが、逆に前線で数字を叩き出す方がより重要視されるかもしれません。

ただ、ヴァンハーゼブルックが指揮を執っていたゲントに所属していた、ダニイェル・ミリチェヴィッチ(現メス)は、森岡と同様のトップ下のチャンスメーカーであるため、決して使いこなせないとも言えないでしょう。ヴァンハーゼブルック監督は、4バックも採用したり、FW無しでスタートしたこともあり、多彩な引き出しがある指導者だけに、従来と違うアンデルレヒトを見られるかもしれません。

森岡亮太が加わって、アンデルレヒトがどう変化するのか、何をもたらすのか、期待したいところです。

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